「うなぎ未来会議2016」 ~ニホンウナギの絶滅リスク評価~

「うなぎ未来会議2016」を傍聴してまいりました。なるべく読みやすく簡潔にまとめてみましたのでご一読いただければありがたいです。

「うなぎ未来会議2016」
~ニホンウナギの絶滅リスク評価~10月30日(日曜日)中央大学後楽園キャンパス

・背景
ニホンウナギは2014年6月、IUCN(国際自然保護連合)に絶滅危惧種に指定された。2018年には、ニホンウナギを含むウナギ属魚類の再評価が行われる予定だ。

IUCN(国際自然保護連合)レッドリストのための評価会議をふまえて専門家と一般市民と理解を深めるのがコンセプト

「専門家からの報告」

・ニホンウナギの個体群動態
ここでは、どのような減り方をしていて今どうなのか?についての研究報告。絶滅危惧種として認定評価の根拠となる数字なのだが、じつは、きちんとしたデータがないのが現状。

元になっているのは水産庁の「ニホンウナギ稚魚 国内捕獲量の推移」という資料。グラフを見ると1975年頃までに右肩下がりのグラフとなっている。しかし1975年頃までのデータにはクロコ(シラス=稚魚よりちょっと成長した段階)の漁獲量も含まれている?という。また、シラス漁をする漁師さんも減っているというから漁獲量だけでは判断ができない。

じゃあ、ホントのところどうなの?減ってるの?

IUCNレッドリストではの絶滅危惧のどの基準に入るのかを評価する。減少要因を取り除くことができるかどうかがポイントとなる。

IUCNレッドリストの基準について詳しく知りたい方はこちらIUCN日本委員会
http://www.iucn.jp/species/redlistcategory.html

2018年の再評価のに向けてモニタリングを行いデータを取っているところ、というか取りはじめたところ。いろいろな資源指標などを用いて分析を進めているのが現状。

・ニホンウナギが直面する危機
ここでは、減少要因の研究からの報告。過剰な消費、違法な漁獲と流通、海洋環境の変化、生息地の喪失と劣化、捕食という内容があげられていた。

過剰な消費
→どのくらい過剰なのか科学的な判断ができる段階ではない。データも不足している。

違法な漁獲と流通
→流通サイドで管理を進める取り組みが一部の県で始まっているが、無報告の違法シラスウナギ漁獲がある。これは資源量の正確な推定に支障をきたす。

生息地の喪失と劣化
→河川・湖沼の岸辺環境の劣化(コンクリート護岸、河口堰、農業用取水堰など)

海洋環境の変化
→変化はあるが、人為的な影響については未解明

捕食
→サメ、マグロ、クジラ、水鳥に捕食されている。

どこに目標を置くのか?
ウナギの個体数の絶滅を防ぐのか?鰻文化、鰻に関わる技術を守るのか?生物と文化の多様性は深く関係しているとのこと。印象的だったのは鰻に関わる文化、技術が先に衰退する可能性もあるということ。

・現在の対策

放流
→増殖の義務の履行、国の事業として実施されているが、効果は出ているのか?

池入れ量制限
→国、都道府県による漁獲規制、池入れ規制、輸出規制などがある。

シラスウナギ漁規制
→漁獲量の報告の義務があるのだが、未報告の漁獲もあるのでは?

生息域環境の回復
→治水、利水、防災の視点からのインフラである。

モニタリング(来遊漁、黄ウナギ、下りウナギ、放流、漁業、環境)
→データを取りはじめたところ。資金と時間と人員の確保が課題。

人工種苗生産
→うなぎの完全養殖技術の研究の現状についてはこちらをご参照
https://unatan.net/?p=3327

情報共有
→鰻が天然資源ということを知らない消費者もいる。正しい情報の共有が必要。

・市民パネルからの意見と提言

上記の専門家の報告を受けて一般公募の市民パネラーからの提言があった。これまでは、専門家の話を一方的に聞くことが多かったが専門家の報告を聞いて一般の市民がどう考えるのか興味深かった。

特に市民パネラーの女子高校生が『資源データがないって慌てているのはどうかと思います』という直球意見は会場内がまさにおっしゃる通りという雰囲気になったのが印象的。

今回は生物学的な観点からの専門家の意見に対して市民パネラーの意見提言というシンポジウム。いち消費者としては、鰻に関する事業者(漁業、養鰻業、流通業、小売業)の話も聞いてみたい。研究者と事業者・行政が参加する「日本うなぎ会議」があるが現在は非公開会議として行われている。

消費者としては各個人がいまできることをやる。まず、正確な情報を知ることなのかもしれない。そして、安いお得だけで購入判断をしないとか情報をもとに違法シラス漁の商品は手にしないとか(これは情報が出てこないかもしれないけど)

人員が不足しているというモニタリング調査などに参加できるのかもしれない。

もっと詳しく知りたい方は下記のサイトなどをご参考くださいませ。

「うなぎ未来会議2016」中央大学広報プレスリリース
http://www.chuo-u.ac.jp/aboutus/communication/press/2016/08/46220/

水産庁~ウナギに関する情報
http://www.jfa.maff.go.jp/j/saibai/unagi.html

2016.07

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