うなぎは大好物である。
昼前、東京メトロ銀座線を日本橋で下車する。午後の打ち合わせまでに時間があるのでブラブラ歩く。日本橋の老舗鰻屋喜代川さんを目指すことにする。永代通りを歩いていくとすぐに兜町、茅場町だ。東京証券取引所の鎧橋を渡ると、日本橋小網町、蛎殻町だ。
分かりやすく言うと、首都高速江戸橋ジャンクションあたりだ。日本橋界隈の町名や橋の名前にはなんとも趣がある。この小網町という名前は佃島の漁師が日本橋の魚市場へ水揚げし、このあたりに網を干したことからついたという説もある。鎧橋を渡ってすぐの細い路地を入ると、喜代川さんがある。
高層ビル群に囲まれた細い路地に、築80年という日本家屋が目立つ。以前、宮川曼魚の「深川のうなぎ」を読んだことがある。宮川曼魚とは、小網町喜代川の二代目の弟である。明治時代の人気鰻屋「深川の宮川」との関係が深い。「つきじ宮川本廛」のページでも書いているが、深川のうなぎ専門店「宮川」で修業をした初代店主が深川宮川の廃業を受けて築地橋東詰めにうなぎ屋を開業したのが、この「宮川本廛」である。
この深川のうなぎ専門店「宮川」の廃業の時に店舗を居抜きで買い取ったのが、宮川曼魚である。そのとき、喜代川を名乗らず宮川を名乗ったと言う話がある。明治の人気店の暖簾を分けたのが「つきじ宮川本廛」、建物を分けたのが宮川曼魚ということになる。深川の宮川が現存しないのは残念である。
日本橋小網町の喜代川は1874年(明治7年)創業で、現在五代目が店主だ。老舗らしい建物の二階部分には葦簀がかけられている。この二階部分、渡辺淳一原作の小説「化身」の舞台にもなっている。二階の座敷部屋のひとつ、三畳間は、ヒロインの名にちなんで「霧子の間」と呼ばれているのだそうだ。残念ながら、お一人様のランチではテーブル席が相応だ。お座敷の入口とテーブル席の入口は別だ。右手のテーブル席用の入口から入る。
店内はテーブル4卓、14席ほど。和風モダンな配色の店内。女将さんは着物で接客、店員さんは、ゆったりとした接客ながら粋な下町風情が漂う。お座敷とテーブル席とではメニューが違う。うな重菊3000円より。うな重松3500円、竹4000円、新香つき、肝吸いは別料金。グレードでうなぎの量が違うとのこと。他に、白焼き、うざく、うまきなどがある。
うな重松3500円をお願いする。どうしても肝吸いが欲しいというわけではないので別料金の肝吸いは注文しなかった。紀州備長炭使用とのことだ。
待つこと10分、うな重登場。皮はうすく、柔らかい。身の表面をややサクッと仕上げてある。身の厚さは普通だが、柔らかくトロトロとホクッの中間あたりの食感だ。タレは醤油系、コクがある。しっかりと蒸され脂も落とされ、あっさりとした上品うな重だ。ご飯の量はやや多め、炊き加減は好みだ。うなぎとご飯、タレのバランスもよい。
老舗の鰻屋の風格が感じられる。店二階で一杯やりながら鰻を楽しみたい。
日本橋料理飲食業組合の若手が集まる三四四会の会員。日本の食文化の伝承に頑張っていただきたいと思う。場所柄お客さんは金融系が多いようだ、株の話と天下りの話・・・。
会計時は女将さん、つり銭はパリッとしたピン札。話題の豊富な粋な老舗鰻屋さんでございます。
探訪日:2013.12
「喜代川」
所在地:東京都中央区日本橋小網町10-5
定休日:日・祝祭日
・お店のホームページ
http://www.unagi-kiyokawa.com/
・食べログでのお店の詳細情報。
https://tabelog.com/tokyo/A1302/A130203/13003046/
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