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浜名湖 スターウナギ 有限会社フルハシ

2017.03の記事をブログ移転のため2020.12にリライトしました。

名古屋でのうなぎ愛好会の集いを主催し、その道中に浜名湖に寄ることにする。春先の浜名湖、穏やかで静かだ。

先日、「浜名湖 スターウナギ」をお取り寄せでいただいたときに養鰻家である有限会社フルハシさんに訪問の打診をしてある。三代目知樹さんに養殖場を案内していただいた。

浜名湖の東側に庄内湖という湾のような養殖業が集まっている地形がある。養殖池のビニールハウスに囲まれた細い路地を行くと有限会社フルハシさんがある。

日本ではじめて本格的なウナギ養殖が始まったのは明治時代の浜名湖からだ。
※養鰻の歴史、浜松についての過去記事はこちら

養殖池。有限会社フルハシさんは前身となる「丸秀養魚」を1968年(昭和43年)に創業。現在では静岡県内では最大規模の養殖場なのだそうだ。

当時はビニールハウスの無い路地池養殖から始まったのだが、魚の病気により、浜名湖の養殖場が壊滅的な危機に直面する。そこで開発されたのが水質・水温を安定させるために池底のパイプに温水を通したりビニールで覆ったりするハウス養殖だ。

浜名湖うなぎフルハシさんの一番の特徴は、汽水に由来するミネラル豊富な地下水が長い年月をかけて地層で濾された淡水を複数の地下水を調整しながら使用して育てられていることだという。そして長い間の養鰻経験で培った技術だという。

稚魚から少し成長して色が付き始めたクロコ。画像の右側に小さいクロコが集まっているのが見えるだろうか。浜名湖うなぎフルハシさんのもうひとつの特徴としては「周年養殖」もやっていることだろう。

浜名湖うなぎフルハシさんでは12月~4月頃にかけて稚魚(シラス)を養殖池に入れる。「周年養殖」では池入れした年の10月~翌年7月頃にかけて出荷するため時間をかけた分、鰻の身がしまり脂がのったうなぎになる。「単年養殖」では池入れした年の6~9月頃にかけて出荷するため養殖期間が短い分、若く身が柔らかいうなぎになる。養殖の方法で違いがあったりするのである。

土用丑の日あたりの夏場にしか鰻を食べない人は「単年養殖」の若く身が柔らかいうなぎに慣れているのかもしれない。こってりとした鰻が好みの方は、秋冬にかけて食べてみるとよいだろう。また夏場とは違ったうなぎの食味に出会えるかもしれない。

体長は20センチほどだろうか、すっかり鰻の姿になっている。

「浜名湖スターウナギ」とはNHKの「ひるブラ」という番組で紹介されたときに番組からつけてもらった愛称なのだそうだ。通常、浜名湖の漁協に卸すのだが、養殖場での選別の時に「これは!」という目に留まったうなぎが「浜名湖スターウナギ」となるという。まさに鰻界のスター誕生のようだ。現在では「浜名湖スターウナギ」として専門的に養殖しているわけではないがゆくゆくはすべてのうなぎが「浜名湖スターウナギ」になれるように日々開発中なのだそうだ。

浜名湖という立地と長年の養殖技術が生み出す「浜名湖スターウナギ」なのだ。

ハウス養殖池をまわっている途中に絶景の浜名湖が。フルハシさんお勧めの景色なのだそうだ。

毎日2回餌与え、池の掃除、設備メンテナンス、池の見回り。そんな重労働の合間に見る浜名湖は疲れを癒してくれるのかもしれない。

出荷時のうなぎのサイズ選別をする装置。微妙に隙間の幅が違う。

「浜名湖スターウナギ」は4Pサイズ(250グラム)にこだわる。4Pサイズを美味しく食べて欲しいという思いがあるという。数量限定の通信販売では人が一尾づつ丁寧に白焼きをするのだ。養鰻が本業である、育てるほうで手一杯になってしまうこともあるので、数量限定なのでそうだ。

出荷時は養殖池からポンプでこちらの選別出荷場にうなぎを送りサイズ選別をしてサイズ別に鰻桶に入れて出荷する。

「浜名湖スターウナギ」の通信販売では、配達日の指定ができない、枚数限定、白焼きのみの提供、など買う側にいろいろ制約がある。

養鰻業として鰻を育てるのが本業であり、浜名湖最大級の養鰻場であるため、社員全員で鰻の世話に当たらなければならない、融通が利かづ申し訳ないという。こういう姿勢も正直にうなぎと向き合っているということであるホントに美味しいものを食べようと思ったら少々の制約は仕方がないのだ。

シャッターのあるところにトラックがつけられ運ばれていく。

浜名湖うなぎフルハシさんの鰻は「浜名湖養魚漁業協同組合」(丸浜)に出荷される。

うなぎはとてもデリケートな魚なのだそうだ。出荷時にも床のパイプからジェットで空気を送り込む。

二代目元治さんに浜名湖の資源保護についてもお話を伺った。「浜名湖養魚漁業協同組合」(丸浜)では資源保護についても積極的に取り組んでいるという。国と鰻業界では2015年(平成27年)からシラスウナギの池入割当量を大幅に制限している。静岡県下の浜名湖でも池入れ制限を実施している。ただ、養殖業者だけでなく、稚魚漁師までを含めての取り組みが大切だと話す。二年後に控えているワシントン条約の動向も気になるところだが、養殖業として今後どうなるのか全く分からないという。

いち消費者として資源問題をはじめ鰻についてまだまだ知らないことが多い。夏場に集中する消費スタイルや「単年養殖」の若く身が柔らかいうなぎを好む傾向などの消費者行動が鰻業界にも波及するのかもしれない。

お忙しいところ見学をさせていただき詳しい話を聞かせていただいた浜名湖うなぎ有限会社フルハシさんに感謝申し上げます。ありがとうございます。

2017.03


 

 

 

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